抑えきれぬ……思いは

菊

23日、天皇の誕生日記者会見があった。
85歳。来年の譲位を控え、天皇としての最後の会見ということ。
明治以来、元首、象徴と位置づけには変化はあるとしても、私個人はそもそも天皇制は否定派だ。それは天皇個人を含めた組織、体制に根本的に異議を持っているからである。ただ、ここでその問題を掘り下げてゆくつもりはない。
昨日の会見で、皇后への謝意の言葉でつまり、涙声になっている所がニュースで報じられた。人間性を表すところとして、取り上げられやすいところかも。
折に触れることすでに11度の訪問になった沖縄の苦難にふれたところで、涙ぐまれながら

「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの心の思いは、これからも変わることはありません」

と結ばれた。最近の政治家の軽薄で冷酷な言葉や姿勢とどれだけ距離があるだろう。また、現下の為政者への強い警告のように感じる。
余談かもしれないが、このように幾度か涙に詰まるような天皇の会見を記憶していない。これまで、象徴としての自らを規制してきたものが、譲位を目前にして解かれた姿と言えばそれまでかもしれないが。

里程標
右か、左か?

思えば、私の前で弱気なところ、まして涙など見せたこともない上司が引退後、ある会合で一緒した時に、自ら握手を求め、涙ぐんだ。
言葉を失った、と同時にとても寂しかったのが正直な気持ちだった。

そんな思いが、昨日の会見にニュースの抜粋を見て思った。
「来年春に私は譲位し、新しい時代が始まります。」
そんな、決まり文句で会見は終わった。
85歳。これからも”沖縄”や”障害や困難を抱えている人”に寄り添う奥行を持ち続けて頂きたい。