自粛ムードで静かだ
向かいの小学校では今日が”卒業証書授与式”。着飾った父母が澄まし顔で門内に吸い込まれる。
杖を突いた老人も不自由そうな片足を引きずるようにして急いでゆく。
背の高い子どもが多いから、たぶん在校生は自粛するのだろうか。
門に立てかけた”卒業証書授与式”の看板の横に立って極めポーズ。
陽光はたっぷり、少し寒いが記念日としては晴れでよかった。
こんな式日には、講堂や体育館で立ち放しが以前はよくあったものだ。
最初は緊張で静かであっても、徐々に静寂が崩れてゆく。
抑え気味な会話や笑い声さへ洩れだす。
そんな時、足音だけさせていきなり当事者に拳固を見舞う。
時には、”テメエラ”と怒号を声に出しながら。
見舞われた方も慣れたもので、テメエラ先生の権幕を予測したよう。
そんな先生は数学教師で、教科書を使わないから
生徒の方は話についてゆくことに注力しないと流れからはみ出してしまう・
その先生は40代の前半で亡くなってしまった。
この時期だったと思う。
